ディメンションデータ戦力分析!【2018年シーズン】

マーク・カヴェンディッシュ、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンの2人のスターを中心としたスプリンターチームのディメンションデータ。

ステージレースの総合成績を改善するために、2年ぶりに復帰したルイス・メインチェスにも大きな期待がかかる布陣となっている。

ディメンションデータ2018ロースター

イゴール・アントン(スペイン)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
スティーヴン・カミングス(イギリス)
マクセブ・ドゥバサイ(エリトリア)
ニック・ドゥーガル(南アフリカ)
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)
ニコラス・ドラミニ(南アフリカ)※トレーニーから昇格
アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア)※トレーニーから昇格
ライアン・ギボンズ(南アフリカ)
レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)
ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)
ベンジャミン・キング(アメリカ)
メルハウィ・クドゥス(エリトリア)
ラクラン・モートン(オーストラリア)
ベン・オコーナー(オーストラリア)
セルジュ・パウェルス(ベルギー)
マーク・レンショー(オーストラリア)
ジェイロバート・トムソン(南アフリカ)
スコット・スウェイツ(イギリス)
ヨハン・ファンジル(南アフリカ)
ジェイコブス・フェンター(南アフリカ)

・加入選手
ルイス・メインチェス(南アフリカ)←UAE・チームエミレーツ
トムイェルト・スラフテル(オランダ)←キャノンデール・ドラパック
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)←クイックステップ・フロアーズ
スコット・デーヴィス(イギリス)←チーム・ウィギンス(CT、イギリス)

・退団選手
オマール・フライレ(スペイン)→アスタナ
ネイサン・ハース(オーストラリア)→カチューシャ・アルペシン
クリスティアン・スバラーリ(イタリア)→イスラエル・サイクリングアカデミー(PCT、イスラエル)
ユシフ・レグイグイ(アルジェリア)→ナトゥーラフォーエバー・ソヴァック(CT、ベルギー)
タイラー・ファラー(アメリカ)→引退
エイドリアン・ニヨンシュティ(ルワンダ)→未定
ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア)→未定
メッケル・イーヨブ(エリトリア)※トレーニー→トレンガヌ・サイクリングチーム(CT、マレーシア)

2年連続WTランキング最下位脱出のキーマン

2016年、2017年と2年続けてワールドツアーのチームランキング最下位となっているのが、ディメンションデータというチームだ。もっとも、2015年はMTNキュベカという名で、プロコンチネンタルチームとして活動していたので、ワールドツアー昇格後、最下位が定位置となってしまっている。

2015年シーズン、MTNキュベカのワールドツアー昇格に向けて、弾みをつけた存在がルイス・メインチェスだった。同年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合10位という好成績を収めたからだ。

そのため、メインチェスはランプレ・メリダ(現UAE・チームエミレーツ)に引き抜かれた。総合系選手が明らかに有利な現在のポイントシステムにおいて、メインチェス不在のディメンションデータは、大いに低迷したのだった。

だが、2018年シーズン、メインチェスが再びディメンションデータに帰ってきた。ランプレ、UAEで過ごした2年間で、ツール・ド・フランス総合8位&新人賞ランキング2位という結果を2年続けて残した。

メインチェスの走りは攻撃的ではない。ひたすら先頭集団に食らいつく走りを見せ、遅れたとしても失うタイムを最小限に留めるような極めて保守的な走りが特徴だ。言い換えれば、安定感の高さが魅力だといえよう。

ディメンションデータの大きな課題がワールドツアーランキング最下位脱出だろう。いくら、ツール・ド・フランスのオフィシャルパートナー企業がチームスポンサーだとしても、いつまでも成績を出せないチームにワールドツアーライセンスを発行し続けるわけにもいかないだろう。それに、UCIとしてもワールドチームを現行の18チームから1〜2チームほど減らす考えを示している。

ディメンションデータはワールドチームとして瀬戸際に立っている。だからこそ、安定感のあるメインチェスにかかる期待は大きくなる。もはや、チームの未来はメインチェスに懸かっているといっても過言ではない。

ツール、ブエルタ両方で総合トップ10圏内が目標となるだろう。

上りに強い選手は意外と揃っている

上りに強い選手としては、アントン、カミングス、クドゥス、モートン、パウェルスあたりがあげられる。

アントンはこれまで、なんとなく総合系エースみたいな立ち位置でグランツールを走らせることが多かったが、全く結果が出ていない。一方で、2015年ジロ・デ・イタリア第15ステージで、モルティローロの上りを駆け上がるアルベルト・コンタドールを同郷のよしみでアシストしたように、アシストとしてならばその登坂力の高さを活かせるように思える。メインチェスの貴重な貴重な山岳アシストとして期待している選手の1人だ。

カミングスは2017年シーズンは怪我に悩まされた。イギリス国内ロード&TTチャンピオンにはなったものの、2015・2016年と2年連続で勝っていたツールでは未勝利に終わった。2018年に37歳を迎える大ベテランであるので、勝利を期待しつつ、メインチェスの山岳アシストとして起用される機会も増えるだろう。

クドゥスは、アフリカの有色人種として初めてグランツール勝利に最も近い選手だ。ブエルタ第5ステージで2位に入っている。ツアー・オブ・オマーン(2.HC)では総合4位&新人賞を獲得している。非常に若い選手で、今後の伸びしろも楽しみな選手だ。

モートンは最大の目標であったツアー・オブ・カリフォルニアで総合7位&新人賞を獲得している。第6ステージの個人TTで失速し、新人賞ジャージを失ったものの、最終第7ステージでは根性の逃げを見せ、逃げ集団内でフィニッシュしたことにより新人賞ジャージの奪還に成功したのだ。初のグランツールとなったブエルタでは、良いところを見せられなかったが、こちらも今後が楽しみな選手である。

パウェルスは、ツール・ド・ヨークシャー(2.1)第3ステージでチームメイトのオマール・フライレと共にワンツーフィニッシュを決めて総合優勝。ツールでは総合19位とチーム最高順位をマークしている。本来の脚質はパンチャーではあるが、上りのアシストとしても期待できるうえに、短いステージレースならば総合優勝を狙った走りも見られるだろう。

チームの2大エース

勝利数を量産するうえでの、チームのエースとなるのはカヴェンディッシュとボアッソンハーゲンだ。

カヴェンディッシュは、怪我や病気に悩まされ続けたシーズンを送った。

2017年シーズンは序盤のアブダビツアーでの1勝しかあげることができなかった。その後、単核球症を患い長期欠場。ツール通算30勝のカヴェンディッシュは、エディ・メルクスの持つツール通算34勝の記録更新を目指して、どうにかツールに間に合わせたものの、第5ステージのゴールスプリント中にペーター・サガンと交錯して(いたかのように思われる)、肩を骨折して未勝利のままツールを去った。

完全に怪我が癒えないままの復帰戦となったツアー・オブ・ブリテン(2.HC)では全くスプリントに絡むことができなかった。本調子が取り戻せないままシーズンが終了し、さいたまクリテリウム出場のために初来日した。

「来日して24時間しか経ってないけど、まるで恋に落ちたような気分だ」「日本のファンは世界一礼儀正しく、本当に素晴らしい」「必ずまた来日したい」と、レースが始まる前から日本にぞっこんラブなご様子。そして、本戦では別府史之とのスプリント勝負となり、僅差で勝利を飾った。まだまだ、本調子ではなかっただろうが、来シーズンに向けて弾みをつける結果となった。もちろん狙うはツール通算34勝の記録更新だ。

もう1人のエース、ボアッソンハーゲンにも大いに期待がかかる。

2017年はシーズン10勝をあげる活躍を見せ、低迷するチームで孤軍奮闘を果たした。ハイライトはツール第19ステージでの独走逃げ切り勝利だろう。カヴェンディッシュがリタイアしてから、勝利のためにずっと攻撃的な走りをし続けていて、ラストチャンスともいえる第19ステージで熟練の逃げ切りを見せた。

そんなボアッソンハーゲンが欲しいタイトルは、クラシックでの勝利だろう。脚質に合っているはずのミラノ〜サンレモやパリ〜ルーベではなかなか結果が残せていない。そして、チームでクラシックが狙える選手はボアッソンハーゲンだけだ。

充実しすぎている平坦スペシャリストたち

スプリンターの2人を支えるための平坦スペシャリストの層は非常に厚い。

平坦スプリントトレインを組むためのルーラー陣としては、アイゼル、ベルハネ、ドゥバサイ、ドゥーガル、トムソン、ファンジル、ヴェンターがいる。

更に、新加入したヴェルモートは、1日中集団をコントロールする力を持つ世界屈指のルーラーだ。

スラフテルは、逃げも得意とする独走力の高い選手だ。ステージ優勝をあげたツアー・オブ・オーストリア(2.1)第2ステージでは4人で逃げ切って、スプリント勝負を制した。逃げ切りの見込みが薄いステージでは、スプリントトレインの一角を担うことも可能だ。

ネオプロのデーヴィスは、U-23イギリス国内TT選手権を4連覇しているTTスペシャリストだ。U-23版ジロ・デ・イタリアでは総合4位、ツアー・アルザス(2.2)総合5位だった。将来は総合系選手も狙えるかもしれないが、カヴェンディッシュのアシストとして、平坦スペシャリストとしての経験を積むことになるだろう。

そして、最終発射台としてはレンショー、スウェイツ、ギボンズが候補となる。

レンショーはカヴェンディッシュにとって欠かすことのできない相棒だ。アイゼルと共に、”カヴェンディッシュファミリー”と称されるほど、長年チームメイトとして走っている。

また、ドラミニ、キング、オコーナー、ゲブレイグザブハイアーは逃げを得意としている選手だ。ローテーションしながらの高速巡航を維持することが得意なので、逃げに乗らなかったときは集団コントロールを担うことも多くなるだろう。

ジャック・ヤンセファンレンズバーグと、レイナルト・ヤンセファンレンズバーグは共にスプリント力の高い選手であるが、パンチャー的な立ち位置で走ることが多くなるだろう。2017年シーズンに同様の立場で走っていたハースとフライレが移籍したことで、活躍の場が増えるだろう。

スプリンターチームに、グランツールレーサーが加わった布陣

グランツール:★★★☆☆
北のクラシック系:★★★☆☆
アルデンヌクラシック系:★★☆☆☆
スプリント:★★★★★

カヴェンディッシュ、ボアッソンハーゲンを中心に、スプリント勝利を狙うチームであることは2017年シーズンと変わらない。スプリンターの補強はなかったものの、ヴェルモートらを獲得したことにより、集団コントロール力は強化された。

そして、WTポイントを獲得するためには、ステージレースの総合成績の向上が欠かせないため、メインチェスを獲得した。ツールでは、カヴェンディッシュのスプリント勝利を狙いつつ、メインチェスの総合上位を狙うような布陣になるだろう。もしくは、ツールではカヴェンディッシュの勝利に集中するために、メインチェスはジロやブエルタに回る可能性もあるかもしれない。

一方で、北のクラシック系レースではボアッソンハーゲンに可能性はあるものの、追従する戦力は少ない。アルデンヌクラシックを狙える選手もほとんどいない。

メインチェスが加わったとはいえ、WTポイント獲得が期待できる選手が少ないことがチームの弱点だ。2017年のように主力選手が怪我などで離脱すると一気にチーム力が低下してしまう。南アフリカ、エリトリア人の若手選手からの突き上げが待ち望まれている。

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2 COMMENTS

アバター画像 サイバナ管理人

Digiさん

あの年のブエルタで、リタイアしていなかったら…と、どうしても考えちゃいますね。

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