ツアー・オブ・ジャパンは、ニューヒーローの発掘現場だ!

2007年、チーム・コニカミノルタのクリス・フルームは伊豆ステージで優勝した。
この走りが注目されたためか、翌年からはイギリスのプロコンチネンタルチームであるバルロワールドへ移籍を果たし、ツール・ド・フランスに初出場している。
2011年のブエルタ・ア・エスパーニャで、ファン・ホセ・コーボとの激闘を繰り広げトップレーサーへと成長していった。

2010年は初日の個人TTを制したジャイコ・スキンズのマイケル・マシューズは、全7ステージで一桁順位を記録して総合4位。
同年の世界選手権U-23ロードチャンピオンとなっている。

2012年、美濃ステージで優勝したチームNIPPOのマクシミリアーノ・リケーゼは、同年のツール・ド・熊野でもステージ1勝&ポイント賞1位、ツール・ド・北海道ではステージ2勝&総合優勝を果たし、翌年からワールドチームのランプレ・メリダに移籍している。

2013年、TOJはUCIカテゴリー2.1へと昇格し、ワールドチームも参戦するなか、伊豆ステージで勝ったのはジェネシス・ウェルス・アドヴァイザーズのネイサン・アールだ。
翌年からチームスカイへ移籍し、今年は2013年以来のツアー・オブ・ジャパンを走っている。

2015年、伊豆ステージで勝利しポイント賞1位にもなったランプレ・メリダのヴァレリオ・コンティは、翌年のブエルタでステージ優勝をあげている。

TOJことツアー・オブ・ジャパンで名を上げ、飛躍していったレーサーは多いのだ。
フルームは当時22歳、マシューズは当時20歳と、いまのスター選手の若手時代の活躍が目立ってはいるが、
リケーゼのように、当時29歳と選手として脂の乗っている時期に活躍したことで、再飛躍を遂げた選手もいる。

若手と中堅、2つの観点から今大会注目の選手を3人紹介したい。

ステージ3勝&ポイント賞のマルコ・カノラ

ツアー・オブ・ジャパンを観戦した人なら誰もが注目するであろう選手がNIPPOヴィーニファンティーニのマルコ・カノラだ。
2014年ジロ・デ・イタリアでステージ優勝の経験があり、28歳と脂が乗った時期に差し掛かっている選手だ。

華々しい実績を持っているが、意外にもワールドチームに所属した経験はない。
2012〜2014年まではイタリアのバルディアーニで、2015・2016年はアメリカのユナイテッドヘルスケア、そして今シーズンからはイタリアのNIPPO・ヴィーニファンティーニに所属している。
いずれもプロコンチネンタルチームだ。

ツアー・オブ・ジャパン3勝のインパクトは非常に大きい。
しかも勝ち方がとても良いのだ。

2戦目の京都ステージでは、最終周回のダウンヒルを利用して単独アタックを決める。
残り10km以上を独走して逃げ切り勝利を飾るという派手で強い勝ち方だった。

3戦目のいなべステージでは、登りスプリントを制して2勝目をあげた。
しかし、ゴールスプリント以上にカノラの強さに衝撃を受けたシーンは、最終周回の最も傾斜が厳しい登りで前年度総合優勝のTeam UKYOのオスカル・プジョルがアタックしたシーンだ。

プロトンの誰もがプジョルのアタックを警戒する中で、一番苦しい激坂区間でのアタックは完璧なタイミングだった。
完全に決まったと思われたその刹那、プロトンから一人追いかけるオレンジ色ジャージの姿があった。
そう、カノラのみが、プジョルのアタックについていけたのだった。

カノラよりスプリント力で劣るプジョルは、追いつかれたことで逃げ切りを狙いにくくなった。
その後、集団に引き戻されゴールスプリントに持ち込んでから、カノラが勝ったのだ。

カノラには一人でプロトンを制圧する力があると確信した瞬間だった。

5戦目の南信州ステージでは、自ら先頭に立って集団をペースアップするシーンも見られ、逃げをコントロール。
狙い通り、ピュアスプリンターをふるい落としてから、集団スプリントに持ち込んで勝ち切った。

7戦目の伊豆ステージでは、終盤に単独で逃げ集団へのブリッジを試みる。
獲得標高3700mに達する超難関コースにも関わらず、カノラのペースは落ちなかった。
この日ステージ優勝したキナンのマルコス・ガルシアに追いつくことは出来なかったが、ステージ3位でフィニッシュ。
ゴールした瞬間の出し切ったカノラの姿がとても印象的だった。

というように、カノラはひたすら強かった。
自分でレースを動かし、しっかり勝ち切る姿はアルデンヌクラシックの王であるフィリップ・ジルベールを彷彿とさせた。

ワールドチームが放っておくはずがない逸材だ。
近い将来、ベルギーのクラシックで勝利を収め、ツール・ド・フランスでポディウムに立つ姿がありありとイメージできる。

端正な顔立ちも魅力なアタッカー、イヴァン・ガルシアコルティナ

富士山ステージまで新人賞ジャージを着用していたバーレーン・メリダのイヴァン・ガルシアコルティナにも注目したい。
ガルシアコルティナは、昨年エティックス・クイックステップのトレーニーとしてデビューした21歳のスペイン人選手だ。
端正な顔立ちをしており、今後女性人気も増えそうだ。

非常に攻撃的な走りを持ち味としており、現段階ではスプリント力も登坂力もある程度持ち合わせたパンチャーと言える脚質を持っている。
ネオプロである今シーズンは、ベルギーのワンデークラシックレースに数多く参戦している。
シュヘルデプライスでは最後まで先頭集団に残り、ゴールスプリントに絡んで11位という成績を収めている。

カノラがアルデンヌクラシック向きのパンチャーなら、ガルシアコルティナはフランドルクラシック向きのパンチャーかも知れない。
とはいえ、21歳の選手なので今後の成長がまだまだ期待できるし、脚質を決めつけるのはまだ早い。

ツアー・オブ・ジャパンでは、自らアタックをかけるシーンが目立っていた。
結果的にはアタックが実ることはなかったが、そのまま集団スプリントに絡んで上位フィニッシュするタフさは目を引くものがあった。

さらに、伊豆ステージではウィリー走行しながらフィニッシュするお茶目なシーンも見せていたし、自身のインスタグラムには浴衣を着ておどける姿もアップされていた。

おちゃらけたキャクター性もとても良いし、アグレッシブな走りにも大いに好感が持てる。
ハンマーシリーズにも参戦するので、ガルシアコルティナの積極的な走りを期待したい。

世界レベルの選手たちと互角の走りを見せていた岡篤志

最後は、我らが日本人から宇都宮ブリッツェン・岡篤志に紹介したいと思う。

ガルシアコルティナと同い年の21歳。
昨年までは弱虫ペダルサイクリングチームの一員として走り、国内アマチュアレースの最高峰・Jエリートツアーで総合優勝を果たした選手だ。

今シーズンからは宇都宮ブリッツェンに移籍して、Jプロツアーを主戦場としている。

ツール・ド・とちぎ第1ステージでは2位に入り、総合成績は6位。
表彰対象ではなかったが、23歳以下の選手では最も良い総合順位となっている。

好調を維持して臨んだツアー・オブ・ジャパンでは、初日のプロローグでは日本人最高順位の8位。
続く2戦目の京都ステージでは、終盤にパンクしてしまい戦線離脱したところから集団復帰に脚を使ったにもかかわらず、日本人最高順位の4位に滑り込んでいる。
もしパンクが無ければ、ステージ優勝もあったかもしれない。

3戦目のいなべ、4戦目の美濃はそれぞれ日本人では2番目の順位となる14位・8位でフィニッシュしている。
5戦目の南信州ステージではバッドデーを迎えてしまい、山岳ステージでは目立った活躍は出来なかったが、大会前半で並みいる世界の強豪を相手に互角の勝負をしている姿は強烈なインパクトを残した。

日本人選手の苦戦が目立った今年のツアー・オブ・ジャパンで、間違いなく輝いていた日本人選手の一人である。

今後は、日本代表強化指定選手にも選出されているため、ブリッツェンでの活動に加えて、浅田監督率いる日本代表チームの一員として海外のレースにも参戦するそうだ。

スポーツシーンではいつだって外野のファンは勝手な期待を寄せるものだ。
一人のサイクルロードレースファンとして、若手日本人選手の活躍を見るのはとても楽しみなことなので仕方がない。

過剰な期待をかけるつもりは全くないのだが、今後の活躍を期待して注目していきたい。

※参考にしたサイト

岡篤志公式ブログ「あの丘の上まで」

岡篤志「地の底から世界へ連れ出してくれた自転車競技」 – cyclowired

まとめ

無論、ここで紹介した選手だけでなく、印象的な走りをしていた選手もいるし、今後に期待したい選手もいる。
誰が凄いのか、誰が今後ブレイクするのか、ということよりも、今後世界で活躍するかもしれない選手を日本国内で間近に見ることが出来ることがツアー・オブ・ジャパンの最大の魅力だと考えている。

その気になれば、現地観戦して選手と直接コミュニーケーションを取ることも出来るし、サインや写真をおねだりすることも可能だ。

世界に繋がるレース。
それがツアー・オブ・ジャパン。

今は世界への登竜門レースの位置づけであったとしても、今後とも大会の発展のためにあらゆる角度から注目していきたいと思う。
ゆくゆくはワールドツアーに昇格する日を夢見ながら。

Rendez-Vous sur le vélo…

4 COMMENTS

いちごう

今年のTOJでの、マルコ・カノーラは強かったですね。

逃げて良し、スプリントして良し、登りも強い。世界的に見ると決してレベルの高くはないTOJの出場選手の中では際立ってたように思います。
彼ほどの選手が、プロツアーチームに入れずプロコンチを渡り歩いてるということが、ヨーロッパのレースレベルの高さを物語ってるな〜と思います。

バーレーン・メリダはワールドツアーチームとしてはかなり物足りなかったですね。同時期開催のジロやツアーオブカリフォルニアに主力選手を送り込んでいるため、層が薄かったのは仕方ないですがもう少し存在感あっても良かったのでは?と。
ガルシアコルティナが奮闘しましたが、最終結果としてインサウスティのステージ1勝のみというのは寂しい限りです。新城選手を連れてきてくれてたら戦力も上がるしもっと注目されたのに、と感じました。

自分は愛知県在住なので、TOJの前半ステージは行けない距離ではないのですが、スケジュール的にいつも行けてないのです。
20年以上ロードレースやってて、プロレースの生観戦がシマノ鈴鹿国際ロードだけというのはちょっと残念です。

それと、TOJは相変わらず富士山だけでほぼ総合優勝が決まってしまうのが若干興醒めなんですよね。

今回のカノーラのようにプロトンの中で一番総合力のある選手が総合優勝できず、「激坂スペシャリスト」が1ステージの結果のみで総合優勝するステージレースというのはゲンティンハイランド(近年は外されて混戦になってます)で決まるランカウイ等、アジアのレースではいくつかありますが、ヨーロッパではあまり多くないと思います。
これでは日本人選手のレベルアップに繋がらないと思いますし、実際日本人でTOJを総合優勝したのは福島晋一さんのみ。その福島さんもキャリアの大半をヨーロッパで過ごした選手です。

岡篤志選手の活躍は唯一と言って良い日本人選手の希望ですね。願わくば国内チームの待遇の良さに満足せずに、早い段階でヨーロッパに出てもらいたいところです。

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サイバナ管理人

いちごうさん

せっかくバーレーン・メリダに出場オファーを出したわけで、ユキヤは是非とも来てほしかったですよね〜。
いい意味で捉えれば、ドーフィネに出場するということで、ツール出場に向けて1軍メンバーとして起用されているから、仕方ないという感じでしょうか。

> 自分は愛知県在住なので、TOJの前半ステージは行けない距離ではないのですが、スケジュール的にいつも行けてないのです。
> 20年以上ロードレースやってて、プロレースの生観戦がシマノ鈴鹿国際ロードだけというのはちょっと残念です。

そうなんですね。
わたしも、現地観戦に積極的に赴くようになったのは最近のことですが、やはり中継では知り得ない部分が見れて楽しいです。
スタート前の選手の雰囲気、表彰式を終えてからの様子。
何より、直接選手とコミュニーケーションできる環境が素晴らしいです。

カノラも、表彰式終えてからずっとファンサービスに努めていて、本当にナイスガイだと思いました。

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アディ

以前にもコメントいたしましたが、愛知県在住の私にとってTOJは、生で海外プロ選手のレースを見られる貴重な機会です
そして場所的に三重のいなべも岐阜の美濃もロード自走で行けてしまうので、1年で1番大切な時期でもあります(笑)
仰るとおり、TOJは若手のステップアップや後のビッグスター発掘の場所として定着していますね!
挙げられた選手以外にも、私は2014年に若干19歳で果敢な走りを披露し、新人賞と山岳賞を獲ったヒュー・カーシーは絶対にワールドチーム入りすると思っていましたが、その通りになって嬉しい限りです(^^)
余談ですがアシストとして入ってなかなかグラツールに出られる機会の無い層の厚いスカイよりも、より実戦経験が積めるキャノンデール入りは良かったと思います
あと手前味噌ですが、いなべ・美濃共にスタート前の選手との交流がしやすい点があります!
バイクはじっくり見られますし、特に古民家とバイクのコラボが見られる美濃は圧巻です
去年の新城幸也選手もいなべステージは比較的楽?に写真撮影やサインゲットできましたし、今年も狙った選手はほぼ間違いなくコミュニケーションがとれました♪
いなべはコース変更によって名勝負製造ステージとなった感があり、またメイン会場からゴール前の上りやKOMポイントまで徒歩圏内で見られてしまうのに、観客数は1番少ない二万人台と、本当に素晴らしいステージです!
カノラのフェンスすれすれの上りゴールスプリントも間近で見られて迫力満点でした!
いなべのスタート前にグリーンジャージのマルコ・カノラって誰?と慌てて経歴を調べて、ジロ区間優勝やティレーノ〜アドリアティコで山岳賞を獲った凄い選手と知ったのは内緒です(笑)
(カノラともしっかり写真を撮っています)
岡選手は一時メンタル的に落ちて上昇路線から外れてしまいましたが、元々のポテンシャルをプレッシャーのかからないJエリートで復活させてよくぞ復調してくれましたね!
他の若手日本人選手では山本元喜選手の弟、大喜選手も総合18位と健闘されていたと思います
疑惑のイラン選手の排除に成功してもやはり富士山ステージの存在が…という問題はありますが、TOJのますますの発展を願ってやまないです

P.S.GWに自走フルビワイチを3日連続でやった(3日で1000kmオーバー!)山本元喜選手をリスペクトして、私も昨日自走フルビワイチしてきました!
実際に走ってみて、改めて元喜選手の凄さが分かりました(^_^;)
https://www.relive.cc/view/1012619756

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サイバナ管理人

アディさん

前回のコメントもそうですが、来年はいなべと美濃にも行ってみたいなと思いました。
今年は南信州と伊豆を観戦したのですが、KOMへのアクセスの良さはいなべの方が上ですよね。
ヒルクライムでもがく選手たちの写真を撮りたいので、来年はいなべ〜南信州という感じで観に行きたいと思いました!

TOJはまだまだ発展途上のレースですし、これからも応援の意味を込めて、しっかり現地観戦していきたいと思います。

山本大喜選手も若くて楽しみな選手ですね!
まだ大学生ということで、卒業後の進路も気になります。

P.S.自走フルビワイチ凄まじいですね…。
もはやブルベの世界です。
アディさんも十分凄いと思いました笑

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