ジロ・デ・イタリアU23(ベビージロ)第8ステージ レポート

ジロ・デ・イタリアU23、通称「ベビージロ」の第8ステージの詳細をレポートします。

※スタートリストはこちら

再びコロンビア勢が躍動

今大会最後の山岳ステージは、ステージ中盤に超級山岳モンテ・グラッパ(登坂距離24.7km・平均勾配5.3%)を越えて、1級山岳フォーツァ(登坂距離14.7km・平均勾配6.4%)を上ってから約20kmの平坦基調の道を走ってフィニッシュするコースになっています。

スタート直後から活発にアタックを繰り返され、いくつかの集団が分裂したままレースは進行しました。

超級山岳モンテ・グラッパのふもとでは、先頭をマーロン・ガイヤール(フランス、ヴァンデU)が単独で走り、19秒差でディムカムド・ウリスバイエフ(カザフスタン、アスタナシティ)が追走、さらに1分19秒差で14人の第1追走集団、2分50秒差で11人の第2追走集団、そして3分50秒差でマリアローザのメイン集団という構図でした。

モンテ・グラッパを越えてもなお、ガイヤールは先頭で独走を維持。

2つの追走集団は脱落を吸収があった結果、20人ほどまで絞り込まれていて、ここにはコロンビアナショナルチームのクリスチャン・ムニョス(コロンビア)、第5ステージで勝利したエイネル・ルビオ(コロンビア)、総合4位のアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ロシアナショナルチーム)、総合5位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ハーゲンズベルマン・アクシオン)といった重要な選手が多く含まれていました。

モンテ・グラッパを下り切ると追走集団から第2・3ステージでマリアローザを着用したマルクス・ヴィルダウェル(オーストリア、チロルサイクリングチーム)がアタックを仕掛け、単独で先頭のガイヤールへブリッジを試みました。

1級山岳フォーツァの上りに差し掛かったフィニッシュまで残り31km地点では、先頭のガイヤールから47秒差でヴィルダウェル、1分40秒差で追走集団、2分5秒差でメイン集団という構図になり、マリアローザの集団が追走集団を捉える勢いで迫ってきました。

すると、追走集団からコロンビア勢が動き出します。ムニョス、ルビオが抜け出すと、ウラソフもジョインして3人で先頭を追う格好となりました。強力な3人はヴィルダウェルを捉えると、先頭のガイヤールも抜き去り、レースの先頭グループを形成しました。

メイン集団には、マリアローザのマーク・ドノヴァン(イギリス、チームウィギンス)、総合2位のアレハンドロ・オソリオ(コロンビア、コロンビアナショナルチーム)、総合3位のスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、SEGレーシングアカデミー)が残っています。

総合4位のウラソフ、総合5位のアルメイダが集団より先行していますが、ドノヴァンのアシストは1人も集団に残っていないため為す術がありませんでした。ウィリアムズのアシストはヤン・マース(オランダ)が残っており、マースが集団の推進力のほとんど担っていました。

なお、翌第9ステージは2部構成になっており、前半が短距離の丘陵コース、後半がアップダウンの激しい個人TTとなっています。

特にドノヴァンは、総合2位のオソリオよりもTT能力が高く、また先行しているウラソフもTT能力の高い選手です。

オソリオはドノヴァンとウラソフにできるだけタイム差をつけて第9ステージを迎えたいところで、ドノヴァンにとってはウラソフとのタイム差を最小限に留めることができれば、マリアローザが見えてくるという状況です。

オソリオは集団の中で機会を伺っていました。1級山岳を上り終えて、ややアップダウンのある平坦路に出ます。残り16km地点で、先頭の3人から50秒差でアルメイダらの追走グループ、2分差でメイン集団です。このままフィニッシュすればウラソフが総合首位となります。

ドノヴァンとSEGレーシングアカデミーのウィリアムズとマースはメイン集団を積極的にけん引して何とか差を詰めようと力を使います。

まず、総合7位のロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・バイクエクスチェンジ)とシーン・ベネット(アメリカ、ハーゲンズベルマン・アクシオン)がメイン集団から飛び出し、2人は協調しながら先頭へのブリッジを試みます。

続いて満を持してオソリオがアタックを仕掛けました。マリアローザたちに、オソリオたちを追う力は残っておらず、オソリオを含めた数人が集団から抜け出す格好となりました。

残り3km地点で、先頭の3人から40秒遅れてアルメイダ、1分37秒差でスタナードとベネット、1分50秒差でオソリオ、そして2分20秒差でメイン集団となっていました。

先頭の3人は逃げ切りを確実なものとします。最後のスプリント勝負は数で勝るコロンビアチームが有利に進め、ムニョスがステージ優勝を飾りました。

31秒遅れでアルメイダ、1分20秒遅れでスタナードとベネット、1分24秒遅れでオソリオ、2分1秒遅れでドノヴァン、ウィリアムズらのメイン集団がフィニッシュしました。

この結果、オソリオが総合首位に再々浮上を果たしました。総合2位にはわずか8秒差でウラソフ、ドノヴァンは23秒差の総合3位に後退しました。

前日の第7ステージでは失速したコロンビア勢が本ステージでは再び暴れまわり、ステージ優勝とマリアローザを獲得する華々しい一日となりました。

しかし、前述の通り第9ステージは一筋縄ではいかないダブルヘッダーとなっています。

特に個人TTはパシュート形式で開催されます。

総合上位から総合タイム差順にスタートし、最終的に1位でフィニッシュした選手が総合優勝するという特殊なルールになっています。

ドラフティング(前の選手を風よけにする)は禁止されているものの、総合1位から6位まで1分20秒内、9位までは2分52秒内で上位選手がひしめいている状況ではハンマーチェイスのような混戦に陥る可能性が考えられます。

ミッチェルトン・バイクエクスチェンジのスポーツディレクターを務めるジェームズ・ヴィクターは「このTTのコースはロブ(・スタナード)の脚質にとてもよく合っています。私たちはすでに広範囲にわたって下見を完了しています。」と、総合7位につけるスタナードの総合ジャンプアップに自信をのぞかせています。

しかし、8秒差につける総合2位のウラソフが最も有利な位置にいるといえましょう。所属チームのガスプロム・ルスヴェロのメンバーとして、ワールドツアーのアブダビツアーやティレーノ~アドリアティコに出場して、実戦でTTバイクに乗ってレースする経験にも長けています。昨年のパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームスカイ)に続いて、2年連続ロシア人による総合優勝を果たすことができるのでしょうか。

中距離・長距離を得意とする選手の育成に定評のあるイギリス人選手であるドノヴァンも19歳ながら、総合優勝を十分に狙える位置につけています。

TTは22.4kmと距離が長めなので、得意な選手と苦手な選手のタイム差は2〜3分程度開いても不思議ではなく、まだまだ総合優勝の行方はわかりません。

※参考:
『Stannard into the points jersey after stage eight of the Giro d’Italia U23』

『DOUBLE ACTION DAY IN ITALY AND BELGIUM』

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