ボーラ・ハンスグローエ戦力分析!【2018年シーズン】

世界選手権3連覇を達成したペテル・サガン擁するボーラ・ハンスグローエ。

補強によりラファル・マイカを中心としたステージレーサーの好成績を期待でき、サム・ベネットでスプリント勝利増産も狙えるバランスの良い布陣となっている。

ボーラ・ハンスグローエ2018ロースター

ペテル・サガン(スロバキア)
ラファル・マイカ(ポーランド)
サム・ベネット(アイルランド)
パスカル・アッカーマン(ドイツ)
エリック・バシュカ(スロバキア)
チェーザレ・ベネデッティ(イタリア)
マチェイ・ボドナル(ポーランド)
エマヌエル・ブッフマン(ドイツ)
マークス・ブルグハート(ドイツ)
ミカル・コラー(スロバキア)
パトリック・コンラッド(オーストリア)
レオポルド・ケニッグ(チェコ)
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア)
グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア)
マッテーオ・ペルッキ(イタリア)
クリストフ・フィングステン(ドイツ)
パウェル・ポリャンスキー(ポーランド)
ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア)
ユライ・サガン(スロバキア)
アレクセイ・サラモティンス(ラトビア)
アンドレアス・シリンガー(ドイツ)
ミヒャエル・シュヴァルツマン(ドイツ)
リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ)

・新加入選手
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)←キャノンデール・ドラパック
フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア)←CCC・スプランディ・ポルコウィチェ(PCT、ポーランド)
ピーター・ケニャック(イギリス)←チームスカイ
ダニエル・オス(イタリア)←BMCレーシング

・退団選手
ヤン・バルタ(チェコ)→エルコフ・アーサー・サイクリングチーム(CT、チェコ)
シルヴィオ・ハークロッツ(ドイツ)→ブルゴス・BH(PCT、スペイン)
ホセ・メンデス(ポルトガル)→ブルゴス・BH(PCT、スペイン)
シェーン・アークボルト(ニュージーランド)→アクアブルースポーツ(PCT、アイルランド)

マイカを中心にステージレースの戦力アップ

グランツール、ステージレースでエースを担いうる選手は4人いる。マイカ、ケニッグ、ブッフマン、そして新加入のフォルモロだ。

この中でずば抜けた実績を持つのはマイカだ。2015年ブエルタ・ア・エスパーニャでは総合3位に入り、2016年ジロ・デ・イタリアでは総合5位となった。2014・2016年のツール・ド・フランスでは山岳賞を獲得しているものの、エースとして走る機会に恵まれず総合27位がツールでの自己最高成績となっている。

2017年のツールは、実質初めての単独エースとして出場したものの、第9ステージで激しく落車した影響もあり途中リタイアとなった。怪我から復帰したツール・ド・ポローニュでは総合2位に入り、続くブエルタでは体調不良も重なり総合成績では沈んでしまったものの第14ステージで逃げ切り勝利を飾っている。

Embed from Getty Images

2018年も引き続きツールを目標として走ることを公言しており、総合上位を目指して走る。

ケニッグは2017年は怪我に悩まされ続けた1年であったが、シーズン最終盤のツアー・オブ・ターキーでようやくシーズン初めての完走となり、続くツアー・オブ・広西では総合39位で完走した。ツールでは2014年に総合7位に入った経験もあり、かつてのコンディションを取り戻すことができれば、TTにも強いケニッグはグランツールで表彰台を獲得するポテンシャルは持っているだろう。

ブッフマンはクリテリウム・デュ・ドーフィネ総合7位&新人賞で、ツールでは総合15位だった。登坂力においては、名だたる強豪に及ばないながらも25歳の選手としては悪くない成長曲線の途上にいる印象だ。ボーラ・ハンスグローエとしても、ドイツ人エースを育てたいという意向は強いはずなので、2018年シーズンも重用されることだろう。

フォルモロは、2016年ブエルタ総合9位、2017年ジロ総合10位とグランツールで実績を出し始めている。ブッフマンと同じく25歳の選手で、今後の成長に期待できる逸材だ。

というように、マイカの実績・安定感からいえば、ツールでエースを担う公算が高いといえる。しかし、ケニッグの怪我からの回復度合、ブッフマン・フォルモロの成長度合によっては、その座も安泰ではないだろう。

そして、チームスカイからケニャックが加入したことも心強い。山岳アシストはほとんどいないような戦力だったので、クリテリウム・デュ・ドーフィネ第7ステージのラルプ・デュエズにフィニッシュするコースで逃げ切り勝利をあげたように、上りに強いケニャックの存在は頼もしい。

Embed from Getty Images

元々の脚質はトラック競技で鍛えたルーラーといえるもので、爆発的な登坂力を持っているわけではない。一方で、本人はグランツールレーサーになりたいという野望も秘めており、エース級のステージレーサーに化ける可能性もある。

2017年のボーラは、サガンとベネットを中心としたチームだったが、ステージレースでも多くのWTポイントを稼げるチームへと変貌するポテンシャルを感じさせる布陣となっている。

世界選4連覇を目指すサガン

このチームのエースは何といっても世界選手権3連覇中のペテル・サガンだ。

2017年シーズンは期待されたモニュメントで勝つことができず、さらにマイヨヴェール6連覇を目指して出場したツールでは、マーク・カヴェンディッシュとの接触の疑いでレースを追放されてしまった。ワールドツアーで10勝をあげたものの、物足りなさを感じるシーズンだった。しかし、シーズン最終戦となったノルウェーでの世界選手権で前人未到の3連覇を達成し、それまでの苦戦を全て覆し大成功といえる一年になった。

Embed from Getty Images

2018年の世界選手権は獲得標高が4700mに達するクライマー向きのコースレイアウトになっている。明らかに”いまの”サガン向きのコースではないが、サガン自身は「Nothing is impossible(不可能なことは何もない)」と世界選4連覇に向けて意欲を示している。

元々、モニュメント全制覇が個人的な目標であり、いまのサガンが狙えるミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベを除いた、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、イル・ロンバルディアといったクライマー向きのクラシックも狙うつもりであった。

2018年はミラノ〜サンレモやルーベではなく、リエージュやロンバルディアと並んで世界選を目標においてトレーニングを進めているのかもしれない。それとも、先にまだ勝っていないミラノ〜サンレモとルーベに向けて調整し、およそ半年後の世界選に向けて調整し直すかもしれない。

いずれにせよ、ツールでのマイヨヴェール連覇記録が途切れたいま、サガンの目標は春と秋に集中し、夏の間は調整に当てることも可能になったという見方もできよう。

春先からどんなレースを見せるのか注目していきたい。

サガン次第だが、アルデンヌクラシックは厳しいか

サガンは北のクラシックを得意としているが、勝負どころでアシスト不足に見舞われて後手に回るシーンが度々見られた。その度にサガンは「チームは今日も素晴らしい仕事をしてくれた」と一切チームを責めることはしていなかったが、勝ちまくったグレッグ・ヴァンアーヴェルマート擁するBMCレーシングと比べるとアシストの戦力差が気になるところだった。

ということで、そのBMCレーシングからオスを獲得した。オスはパリ〜ルーベにおいて、ヴァンアーヴェルマートを勝利に導く決定的な仕事をしていた極めて重要なアシストだった。

Embed from Getty Images

脚質はルーラーで長時間の集団牽引や逃げを得意とし、身長190cmの体格を活かして石畳のコースを得意としている。サガンとオスは、2009〜2012年の4年間チームメイトで、オスはサガンの教育係を務めていた仲だ。5年ぶりのコンビ再結成となる。

ボドナル、ブルグハート、コラー、フィングステン、ユライ・サガン、サラモティンス、ペストルベルガー、シュリンガー、ゼーリッヒも北のクラシック要員だ。新加入のケニャックもサガンのアシストに意欲を示している。

アルデンヌクラシックでは、サガンがリエージュやロンバルディアを狙うとなれば別の話となるが、いまのところは絶対的エースは不在となっている。

マッカーシーのアムステルゴールドレース17位、コンラッドのフレーシュ・ワロンヌ16位、マイカのリエージュ10位がそれぞれ最高順位となっている。今のところは、勝利を狙うのは厳しいかもしれない。

ベネットの成長により、サガンと並ぶ勝ち頭に

ピュアスプリンターと並んで、ステージ優勝を勝ち取るサガンのスプリント力は凄まじいが、2017年はベネットも急成長を遂げた一年となった。

パリ〜ニースでワールドツアー自身初勝利をあげると、ツアー・オブ・ターキーでは怒涛の4勝をあげ、シーズン10勝をあげた。サガンの12勝に次ぐチーム2番目の好成績だ。

Embed from Getty Images

狙うはグランツールでのステージ優勝だ。ジロではフェルナンド・ガビリアに苦汁を味わされ続けたものの、ピュアスプリンターとしての階段を着実に登っている印象だ。チームとしてもサガンに次ぐ勝ち頭を確立できたことが大きい。

リードアウトは、アッカーマン、シュヴァルツマン、ゼーリッヒが担当するだろう。スプリントトレインには、オスとケニャックが加わったことで集団コントロール力は増している。

サガン中心のチームでありながら、ステージレースも狙える布陣に

グランツール:★★★★☆
北のクラシック系:★★★★★
アルデンヌクラシック系:★★☆☆☆?
スプリント:★★★★★

サガンが世界選4連覇に向けて、どのようなスケジュールを組むのか次第ではあるが、2017年の実績を踏まえた現時点での評価をするならば、北のクラシックとスプリントで多くの勝利を期待できるだろう。

やはりオスの加入が非常に大きく、サガンは北のクラシックで相当戦いやすくなることだろう。

ステージレースに関しても、フォルモロとケニャックの加入により大幅戦力アップを果たした。怪我で1年のほとんどを棒に振ったケニッグのコンディションが戻れば、様々なステージレースで好成績を期待できるようになる。

スプリントは、サガンに次いでベネットが頼もしい存在になりつつある。更なるステップアップを目指してグランツールでの勝利を狙いたい。

・関連記事

ペテル・サガンのロード世界選手権4連覇は可能だろうか?

チームスカイの生え抜きであるピーター・ケニャック移籍の理由とは?

ペダルを踏み外しても勝利するペテル・サガンの圧倒的なパワーとは?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)