ラグビー観戦初心者がワールドカップ観戦をして、マイナースポーツ普及のヒントを掴んだ話

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」

とは、ラグビーワールドカップ2019日本大会の公式キャッチコピーだ。

https://www.rugbyworldcup.com/ より

日本におけるラグビーの認知度はまだまだマイナーだといえよう。しかし、ラグビー日本代表は2015年のワールドカップで超強豪である南アフリカを撃破して快進撃を見せた。当時の主力選手であった五郎丸歩選手は、その後連日のようにメディアに登場し、ラグビーの認知度を一気に高めることとなった。

それでも、実際にラグビーの試合を観戦したという人は決して多くなかったのではないかと思う。少なくとも筆者はそうだった。楕円形のボールを使う競技として、しばしばラグビーとアメフトの違いがわからないという意見を耳にするが、少なくとも当時の筆者の認識は後ろにパスをするのがラグビー、前にパスを出してもいいのがアメフトくらいの理解度だった。

そして、2020年に東京オリンピック(夏季五輪)を迎えるというタイミングで、ラグビーワールドカップが開催された。

近年、日本国内で行われた4年に一度級の大規模な国際大会としては、1998年の長野オリンピック(冬季五輪)と2002年のFIFAワールドカップ(サッカー、日韓共催)くらいだろう。

調べるとバレーボールのワールドカップは1977年以降、毎回日本で開催されており、野球のWBCは、予選ラウンドが日本で開催されているため希少感は少ない。2006年にバスケットボールのワールドカップ、2007年にアメリカンフットボールのワールドカップが日本で開催されたが、今回調べて初めて知った事実である。

ということで、4年に一度の希少感の高い世界大会が日本国内で開催されるということは、一生に一度あるかないかの出来事だろう。ラグビーワールドカップを楽しまないと非常に勿体ないと思ったのだ。

この瞬間、筆者はラグビーのにわかファンとなった。

面白いのに複雑なラグビー

まずはラグビーという競技の魅力を知ろうと思った。何に熱狂し、何に夢中になるのか。このとき、とても良かったのがAmazonプライムで視聴できる「オール・オア・ナッシング」というドキュメンタリーだった。

オール・オア・ナッシング~ニュージーランド オールブラックスの変革~ (字幕版)

体重100kgを越える大男のタックルを受け止め、そんな大男が2人・3人と重なって押し合いへし合う姿の迫力を見て、これは凄いスポーツだ!と衝撃を受けた。よく怪我しないなと。一般ピープルがあの場に放り込まれたら、即死するくらい危険に思えた。

ただ、この番組は選手の心情にフォーカスを置いているため、ルールや戦術面の理解の助けにはあまりなっていない。ちなみに、筆者は10年ほど前、アメフトの現地観戦をしたことがあった。まったくルールがわからないまま観戦したところ、当時を振り返って覚えていることは残念ながら一切ない。かろうじて対戦チームの名前は覚えているが、結果は覚えてなく、結局アメフトのルールもわからず仕舞いだ。

その反省を活かして、次にやることはラグビーのルールを知ることだと思った。ところが、ラグビーのルールは物凄く複雑で分かりづらい。さらに、ルールを知るだけでは不十分で、どんな動きが得点に繋がるのか、守備に効くのかを知るために、代表的な戦術を知ることも必要である。

そこで役に立ったのがこちらのサイト。

・はじめてのラグビー
https://rugby-shoshinsha.com/

「主な反則ルール」と「プレーの見方」の項目は一通り読んだ。

そして、実際に試合映像を見てみる。DAZNで過去の試合の放送がったので、ハイライトのみではあったがいくつか視聴してみた。すると、ノックオンやノットリリースザボールあたりのルールであれば、「今のはノックオンだ!」とわかるようになった。

試合中の動きが少しでもわかるという感覚は、観戦を楽しむ上で非常に大事な要素である。ラグビーって面白そう、から、ラグビーは面白い!へと変化した。

いよいよ、ラグビーワールドカップが開幕する。開幕戦となる日本対ロシア戦をはじめ、「オールブラックス」の愛称で知られるW杯3度優勝のニュージーランドと「スプリングボクス」の愛称をもちW杯2度優勝の南アフリカの一戦、そして世界ランキング1位のアイルランドと前回大会で日本が大敗北を喫したスコットランドとの一戦など、好カードが目白押しだった。

それらの試合を見て、テレビ中継の解説だけではプレーの細かい意図など十分に理解することはできなかったが、ネットには詳しい解説をしてくれる人たちがいる。

・ラグビーW杯 日本第1戦 vsロシア レビュー
https://anond.hatelabo.jp/20190920220725

・ラグビーW杯 21日第2試合 ニュージランド vs 南アフリカ レビュー
https://anond.hatelabo.jp/20190921214539

・ラグビーW杯 22日第2試合 アイルランド vs スコットランド レビュー
https://anond.hatelabo.jp/20190922200115

どんな狙いを持って試合に臨み、それが結果としてどんなプレーに現れてくるのか、という戦略と戦術の理解に大いに役立つエントリーだった。加えて「ニュージーランドのハカのリードは通常、マオリの血を引くメンバーでないといけない」といった豆知識も嬉しい。

さらに、Twitterでラグビーに関することをつぶやくと、これはこういことで、こんなことも知るともっと面白いよと、(とても良い意味で)おせっかいな人たちによって、どんどんラグビーを面白く感じるようになってきている。

ちゃんと試合を見たのは数試合ながら、割と楽しめるようになったので、にわかファンのアプローチとしては良かったのではないかと思う。ここから、さらに熟練していくためにはより詳しくルールと戦術を知っていく必要があるだろう。

アイルランド対スコットランド戦は現地観戦をしたのだが、現地のファンの雰囲気がとても最高で、テレビ中継とは違う楽しみも知れてよかった。

にわかファンから定着するために必要なこと

さて、この記事で伝えたいことはラグビー楽しいよ、ということではない。サイクルロードレースの面白さを伝えるためにはどうしたら良いか、ということである。

ラグビーとサイクルロードレースには共通点が複数ある。

・実際に見ると迫力が凄い
・日本では野球やサッカーに比べてマイナー
・常に危険と隣合わせ
・戦術が複雑で理解が難しい

といったところが似ていると思う。

したがって、現在進行中で多くのにわかファンを獲得しているラグビーから学ぶべきことはたくさんとあると感じたのだ。

どんな競技かわからないところから、このスポーツは面白い!となるところまでサポートできれば、ファンの数は確実に増えるはずである。

その手順は次の通りである。

1、希少性の高い世界大会などをきっかけに、その競技に興味を持つ
→サイクルロードレースに関していえば、かつての弱ペダブームや昨今のスポーツバイクブームを筆頭に、来年のオリンピックも一つのチャンスだろう

2、その競技の魅力を知る
→ラグビーにおける「オール・オア・ナッシング」のようなもの、サイクルロードレースなら映画「疾風スプリンター」、漫画「弱虫ペダル」「シャカリキ!」、書籍なら「エスケープ(文庫版は『逃げ』)」がおすすめ

3、ルールと戦術をざっくりと理解する
→手前味噌で申し訳ないが、筆者が自転車協会の「ENJOY SPORTS BICYCLE」に寄稿している「サイクルロードレース観戦の楽しみ方」の連載は、レースを全く知らない人向けに書いているので、ぜひおすすめしたい。

https://www.sbaa-bicycle.com/sbaa_sp/watching/

4、実際に試合(レース)を見る
→サイクルロードレースは基本的に課金しないと見れないコンテンツであるのが、普及の壁になっていることは事実。そのなかで、J SPORTSがたまにやる無料放送や、DAZNの1ヶ月無料体験は普及の貴重なチャンス。

5、実際に見た試合(レース)のレビューを見て、戦術理解を深める
→サイクルロードレース界で一番不足している部分だと思う。手前味噌で申し訳ないが、サイバナに需要があったのはまさにこの部分を解説していることが多かったからだと自己分析。改めて、レースレビュー記事を書いていこうと思った。
りんぐすらいど」さんも相当な量のレビュー記事を書いているので、とてもおすすめ!

6、現地観戦に行ってみる
→テレビ観戦とは違う楽しみ方を知る。特にサイクルロードレースは、選手との距離が近いというメジャースポーツにはない圧倒的な強みがあるので、推していきたい。

7、そして定着へ
→ひとつは面白い!と思ったことを語り合える環境に身を置くことだと思う。ところが、マイナースポーツのファンは周りに少ないことが多い。TwitterをはじめとしたSNSは定着に役に立つし、オフ会を開催する意義もここにあるなと改めて思った。

このなかで重要なフェーズは3〜5あたりではないかと思う。競技の真の魅力に気付く前に、こんなものかと思って離れる人も多いのではないだろうか。

そして、3〜5のフェーズを個人の努力で越えることは難しいと思う。そして、大衆向けのコンテンツだけでは、やや不十分にも思える(なぜなら、ラグビーのテレビ中継だけではよくわからなかったから)ため、コアなネットのコンテンツや、SNSを通じて先輩ファンによるフォローが必要不可欠なのだ。

今後、サイクルロードレース界にとって、今回のラグビーワールドカップのような普及の大チャンスはそうそう訪れないだろう。少ないチャンスを活かすためにも、できる準備をしていきたいと思う。

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