チャレンジ・マヨルカの若手登竜門レース化について

 チャレンジ・マヨルカというレースはないのだが、1月末頃にスペイン・マヨルカ島で開催される4〜5戦のワンデーレース群のことを「チャレンジ・マヨルカ」と呼んでいる。かつては、ワンデー全戦の完走タイムを合算して、総合成績を算出して表彰していたが、2010年からその表彰も廃止されているようだ。(※Wikipediaより)

 ステージレースではなくワンデーレース群にしている理由は、多くの選手がシーズンインするレースということもあって、リタイアしても次のレースへの出場機会を得られるようワンデー方式にしていると、小耳に挟んだ記憶がある。つまり、調整レース的な意味合いも多く含まれているレースということだ。プロ野球でいえばオープン戦、サッカーでいえばプレシーズンマッチ的な位置づけだろうか。

 しかしながら、過去のチャレンジ・マヨルカのレース勝者を調べてみると、オープン戦・プレシーズンマッチとは思えぬ主力級の選手たちの活躍が目立っている。以下が過去10年のチャンレジ・マヨルカ勝者一覧である。

開催年勝者
2014 サーシャ・モドロ2勝、ジャンニ・メールスマン、ミハウ・クフィアトコフスキ
2015マッテオ・ペルッキ2勝、スティーブン・カミングス、アレハンドロ・バルベルデ
2016アンドレ・グライペル2勝、ジャンルーカ・ブランビッラ、ファビアン・カンチェラーラ
2017アンドレ・グライペル、ティム・ウェレンス2勝、ダニエル・マクレー
2018ジョン・デゲンコルプ2勝、トムス・スクインシュ、ティム・ウェレンス
2019ヘスス・エラダ、エマヌエル・ブッフマン、ティム・ウェレンス、マルセル・キッテル
2020マッテオ・モスケッティ2勝、マルク・ソレル、エマヌエル・ブッフマン
2021ライアン・ギボンズ、ヘスス・エラダ、ウィネル・アナコナ、アンドレ・グライペル
2022ブランドン・マクナルティ、ビニアム・ギルマイ、ティム・ウェレンス、アレハンドロ・バルベルデ、アルノー・デリー
2023ルイ・コスタ、マライン・ファンデンベルフコーブ・ホーセンス2勝イーサン・ヴァーノン
※チャレンジ・マヨルカシリーズは毎年のようにレースやコースが変わるので、単純に勝者の一覧を記載した。
※太字は当時25歳以下で通算5勝以下だった選手

 

 毎年のようにコースが変わるといっても、基本的には「基本平坦なピュアスプリンター向け」「アップダウンを含むスプリンター向け」「途中にガッツリ上るパンチャー・クライマー向け」「終始アップダウンありのギザギザアルデンヌ系パンチャー向け」の4パターンのいずれかコースが組み込まれていて、本格的なヒルクライムを含む山頂フィニッシュ系のコースは登場していない。

集団スプリントを制し、イーサン・ヴァーノンが勝利したトロフェオ・パルマのコースプロフィール
ルイ・コスタが勝利したトロフェオ・カヴィアのコースプロフィール
集団スプリントを制し、マライン・ファンデンベルフが勝利したトロフェオ・セスサリーヌ〜アルクディアのコースプロフィール
コーブ・ホーセンスが独走勝利したトロフェオ・アンドラッチ 〜 ミラドル・デス・コロメルのコースプロフィール

 2023年のコースプロフィールを記載してみたが、スプリンターとパンチャー・クライマー系の選手が勝っているのも納得のプロフィール図だろう。そして、基本的に多くのレースで26歳以上もしくは通算6勝以上の選手が勝っており、グライペル、バルベルデ、カンチェラーラなど30歳以上のベテラン選手の勝利も目立つ。そして、何より勝者一覧に名前の記載がある選手の大半がゆくゆくはレジェンド扱いされてもおかしくない、実力者が多い。世界選優勝経験者に至っては4名もいる。もともと、チャレンジ・マヨルカの持つ性質としては、調整レースとはいえ実力者が順当に勝つレースだったといえよう。

 一方で2014〜2021年の間に、若手(25歳以下&5勝以下)がチャレンジ・マヨルカに勝利して、その後飛躍していったケースは、2014年に世界王者となったクフィアトコフスキくらいだ。マクレーとモスケッティは大ブレイクに至ったとはいえないだろう。

 しかし、2022・2023年は一気に勝者のキャリアが若返った。2022年はギルマイは25歳以下でプロ6勝目だったものの、ヘント〜ウェヴェルヘム優勝やジロ区間勝利などあげ、デリーはマヨルカでのプロ初勝利を皮切りにシーズン9勝を飾るなど、2人とも大ブレイクといえる飛躍を果たした。

 2023年はファンデンベルフ、ホーセンスがプロ初勝利を飾り、ヴァーノンはプロ4勝目ながらプロ2年目の若手選手だ。ファンデンベルフは前年にブレイクしたギルマイを破っての勝利で、ホーセンスは20km独走でプロ初勝利した翌日も3km独走勝利を飾り強い勝ち方をし、ヴァーノンもまたギルマイを破って勝利した。まだまだプロトンでの知名度が低い3人であるが、近年の傾向を考えると2023年にブレイクする兆しなのかもしれない、と思った次第である。

 

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