カチューシャ・アルペシン戦力分析!【2019年シーズン】

マルセル・キッテル、イルヌール・ザカリンなどスター選手を抱えながらもシーズン5勝と大不振に陥ったカチューシャ・アルペシン。

チームの建て直しが急務であるが、大物獲得はなく、既存戦力の底上げと主力選手のバウンスバックが鍵となる。

カチューシャ・アルペシン2019ロースター

イエンセ・ビエルマンス(23、ベルギー、PS)
イアン・ボズウェル(27、アメリカ、A)
ステフ・クラス(22、ベルギー、C)
アレックス・ドーセット(30、イギリス、T)
マッテオ・ファッブロ(23、イタリア、C)
ジョセ・ゴンサルベス(29、ポルトガル、PC・E)
ネイサン・ハース(29、オーストラリア、PC)
マルコ・ハラー(27、オーストリア、L)
レト・ホレンシュタイン(33、スイス、T・R)
マルセル・キッテル(30、ドイツ、S)
パヴェル・コチェトコフ(32、ロシア、RC)
ビアチェスラフ・クズネツォフ(29、ロシア、PS)
ニルス・ポリッツ(24、ドイツ、RS・U)
マッズ・ウルスシュミット(24、デンマーク、T)
ウィレム・スミット(26、南アフリカ、R・E)
シモン・スピラク(32、スロベニア、A・C)
リック・ツァベル(25、ドイツ、S・L)
イルヌール・ザカリン(29、ロシア、A)

・新加入選手

イェンス・デブシェール(29、ベルギー、S・L・U)←ロット・スーダル
エンリーコ・バッタリーン(29、イタリア、PS)←ロットNL・ユンボ
ルーベン・ゲレイロ(24、ポルトガル、RC)←トレック・セガフレード
ダニエル・ナバーロ(35、スペイン、C)←コフィディス・ソルシオンクレディ(PCT、フランス)
ドミトリー・ストラコフ(23、ロシア、PS)←ロコスフィンクス(CT、ロシア)※トレーニーから昇格
ハリー・タンフィールド(24、イギリス、T・R)←キャニオン・アイスバーグ(CT、イギリス)

・退団選手

トニー・マルティン(33、ドイツ、T・U)→チーム ユンボ・ヴィスマ
バティスト・プランカールト(30、ベルギー、PS)→WBアクアプロテクト・ヴェランクラシック(PCT、ベルギー)
ヨナタン・レストレポ(24、コロンビア、P)→マンサナ・ポストボン(PCT、コロンビア)
マウリス・ラメルティンク(28、オランダ、PC)→ルームポット・チャールズ(PCT、オランダ)
マルコ・マティス(24、ドイツ、T)→コフィディス・ソルシオンクレディ(PCT、フランス)
ティアゴ・マシャド(33、ポルトガル、RC・E)→スポルティング・クラブ・デ・ポルトガル(CT、ポルトガル)
ロベルト・キセルロウスキー(32、クロアチア、C)→引退
マキシム・ベルコフ(33、ロシア、R)→未定


S:スプリンター
C:クライマー
A:オールラウンダー(ステージレーサー)
TS:10km以下の短い距離に強いTTスペシャリスト、TL:30km以上の長距離に強いTTスペシャリスト、T:どちらの性質も持つTTスペシャリスト
PS:スプリントに強いパンチャー、PC:上りに強いパンチャー、P:どちらの性質も持つパンチャー
RS:スプリントに強いルーラー、RC:上りに強いルーラー、R:どちらの性質も持つルーラー
E:逃げのスペシャリスト
L:リードアウトマン
U:石畳・未舗装路に強い
D:ダウンヒルが得意

※年齢は2018.12.31時点で換算

2018年シーズンの主な戦績

・シーズン 5勝
(うちワールドツアー 2勝)

・UCIランキング
 ワールドツアーチーム:2757pts(17位)
 ワールドツアー個人:ハース(508pts、74位)
 UCIポイント個人:ハース(687.67pts、97位)

・チーム勝利数ランキング
 2勝 キッテル
 1勝 ポリッツ、ハース、マルティン

・レース出場日数ランキング
 90日 ゴンサルベス
 86日 コチェトコフ
 81日 ドーセット
 80日 ボズウェル、ポリッツ

・グランツール総合成績

ジロ・デ・イタリア:ゴンサルベス(14位)
ツール・ド・フランス:ザカリン(9位)
ブエルタ・ア・エスパーニャ:ザカリン(20位)

・モニュメント成績

ミラノ〜サンレモ:ハース(18位)
ロンド・ファン・フラーンデレン:ポリッツ(17位)
パリ〜ルーベ:ポリッツ(7位)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:ラメルティンク(21位)
イル・ロンバルディア:コチェトコフ(40位)

戦力補強アナリティクス

評価:★★★☆☆

2018年シーズン、ワールドチーム全18チームのなかで、一番勝てなかったチームはカチューシャ・アルペシンだった。特に2017年シーズン最多勝のキッテルを獲得したにもかかわらず、わずか2勝止まり。キッテルとスプリントトレインの連携の問題があったため、というのがキッテル本人が公に語った不振の理由である。

そこで、今オフはリードアウトトレインに起用しうる人材を多く獲得。デブシェールは長年、アンドレ・グライペルのアシストとして活躍してしたリードアウトマンだ。バッタリーンはいわゆる上れるスプリンターで、基本的には丘陵コースのスプリントを狙うエースであるが、平坦スプリントのレースではキッテルのリードアウトに回る可能性もあるだろう。タンフィールドは1kmパシュートを得意とするトラックレーサーで、フィニッシュが間近に迫った集団を高速けん引するのにもってこいだ。

さて、肝心なことはキッテルとの相性である。思うにキッテルはかなり繊細な性格なのではないかと思う。ツァベル、ポリッツなどドイツ人と一緒にレースに出場する機会が多かったものの、「連携の問題」を理由として語るあたり、ドイツ人同士とはいえ、あまり仲良くないのかもしれない。一方でハラーが怪我でツールを欠場した際に「彼がいないことは痛い」と語っていたので、ドイツ語圏とはいえオーストリア人のハラーへの信頼は厚かったように思われる。

そこで、ベルギー人のデブシェール、イタリア人のバッタリーン、イギリス人のタンフィールドとキッテルは仲良くできるのだろうか。当の本人たちしか知る由はないのだが、本当の意味でスプリントトレインが強化されたかどうかは、懐疑的であるというのが筆者の意見である。

もう一人のチームの顔であるザカリンも、2018年は全く良いところがなかった。山岳アシスト強化のために、ゲレイロとナバーロを獲得した。

ストラコフは、シーズン前半のポルトガルとスペインのレースで6勝をあげる活躍をしていた。スプリントで4勝をあげており、短い上りにも強く、ピュアスプリンターが生き残れない展開での集団スプリントを得意としている。トレーニーとして出場したアークティックレース・オブ・ノルウェーで総合9位、ツアー・オブ・ブリテンではチーム最上位となる総合8位となった。

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トレーニーは実力があっても、アシスト役を命じられることが多く、エース級の結果を残すことは異例中の異例である。いくら逸材であったとしても、トレーニーをエースとして起用することは考えにくいため、アシストの仕事を全うした上でステージ上位に食い込む実力の持ち主なのだろう。もしくは、トレーニーにもかかわらず、自由に走ることを許された存在なのか。いずれにせよ、期待値の高い選手である。そして23歳とは思えない貫禄のある顔立ちをしている。ゆくゆくはワンデークラシックで勝てる選手になれるかどうか、2019年シーズンは春のクラシックでの走りに注目したい。

注目選手プレビュー

深刻な不振から脱却を図るキッテル

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2015年シーズンはウイルス感染症に苦しみ、シーズン1勝しかあげることができなかった。それに比べると、2018年は2勝をしているのだが、シーズン終了後にメディカルチェックを受けた際に、特にフィジカル面での問題は見当たらなかったことから、2018年の不振の方が深刻だ。

昨シーズンのスプリントは、途中まで良い位置にいたにもかかわらず、いざスプリントが始まるとすぐに踏むことをやめてしまい、フィニッシュするケースが散見された。それをキッテルは「連携の問題」と称していた。

2017年のキッテルは、あえて後方からスプリントする「俯瞰型スプリント」を得意としていた。そのため、キッテルのリードアウトは集団先頭をキープするような走り方ではなく、ラスト数キロで余計な力を使わせず、そこそこ集団前方をキープすれば良かった。しかし、カチューシャのリードアウト陣はがむしゃらに集団先頭をキープしたがるような走りをしているように見えた。そのあたりに、連携の問題が潜んでいるのかもしれないが、シーズンが進んでも全く改善されないあたりに、どうしても闇を感じてしまうのだ。

キッテルからの厚い信頼を得ているハラーが、怪我で長期離脱したことも痛手だったかもしれない。ハラーの復活、新戦力のデブシェールらとの連携がうまくいけば、キッテル自身の復活も期待できるのだが、果たして。

ロシア期待の星と称されたザカリンは、もう一度輝けるか

2017年はジロ総合5位、ブエルタ総合3位と飛躍を予感させる結果を出したが、2018年はツール総合9位、ブエルタ総合20位とやや低迷。ほかのステージレースでもグランツール総合優勝を狙っていた選手としては寂しい結果ばかり。

キッテル不振の影に隠れているが、実はザカリンの不振具合もなかなか深刻である。果たしてテクニカルな問題なのか、精神的な問題なのか。2019年は2年ぶりにジロに出場予定である。

不振のチームで奮闘ぶりが目立ったハース

キッテルと共に移籍1年目のハースは、チーム内でもっともワールドツアーポイントとUCIポイントを稼いだ選手となった。しかしながら、グランツールへの出場はなし。チーム内において唯一のオーストラリア人選手の起用法がよくわからない。確かにハースの脚質を考えれば、3週間のグランツールより1週間のステージレースの方が、総合成績もステージ優勝も狙えるかもしれないが。

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明るい性格の持ち主で、ほっともっとの弁当が大好きな親日家でもあるだけに動向が気になるし、応援していきたいところなのだが…。

得意のスイスを狙うスピラク

1週間のステージレースの専門家、という珍しいタイプの選手だ。スイスのレースと相性が良く、ツール・ド・ロマンディは総合優勝1回・ステージ優勝3回、ツール・ド・スイスは総合優勝2回・ステージ優勝1回あげている。

2018年はツール・ド・スイス総合6位ながら、シーズンを通して未勝利に終わった。2019年もメインターゲットはツール・ド・スイスとなるだろう。

石畳と逃げへの適性を示したポリッツ

絶望のチームにおいて、希望の光といえるのがポリッツだろう。

パリ〜ニース第5ステージで逃げ切りを決めたものの、経験の差が響きステージ2位に。ロンド・ファン・フラーンデレン17位、パリ〜ルーベ7位と好成績を残すと、ドイツツアーではプロ初勝利となるステージ優勝を飾り、総合2位となった。さいたまクリテリウムにも出場していた。

長距離逃げを得意としながら、北のクラシックへの適性もある。とても将来が楽しみな選手の一人だ。

チーム総合評価

ステージレース:★★★☆☆
北のクラシック:★★★★☆
アルデンヌクラシック:★☆☆☆☆
スプリント:★★★★☆
個人タイムトライアル:★★★☆☆
チームタイムトライアル:★★★★☆
平均年齢:27.4歳

ボズウェルや大ベテランのナバーロにグランツールのリーダーを託すのはさすがに厳しいだろう。つまり、総合はザカリン頼みだが、深刻な不振から脱却できるかどうかは未知数である。

北のクラシックではポリッツの飛躍が大いに期待できる。24歳と伸び盛りな年齢も楽しみなところだ。石畳を得意とするデブシェールの加入も好材料だ。

アルデンヌクラシックでは、ハースやゴンサルベスあたりに適性があると思われるが、これまでに目立った実績はなく、厳しい戦いとなりそうだ。

スプリントはキッテルが復活できるかどうかが全てであるといえよう。ツァベルが一皮向けて、集団スプリントに勝てるようになるかもしれないし、ネオプロのストラコフの伸びしろも楽しみだ。

(おまけ)サイバナの推しメン:ジョゼ・アゼベド

カチューシャは元々ロシアの国策チームであったが、現在の登録国はスイス。アルペシンはドイツの会社だが、GMのジョゼ・アゼベドはポルトガル人だ。そのため、ロシア人選手はわずか4人まで減り、スポンサーの意向のためかドイツ人選手が3人と多く所属。GMと同じ国籍のポルトガル人選手は2人いる。

ドイツ人選手とロシア人監督の対立が表面化するなど、チーム内の人間が向いている方向がバラバラ。そのような組織が強いはずがなかろう。

そこで、アゼベドは首脳陣にテコ入れを図った。トレック・セガフレードで監督を務めていたベンギー人のディルク・デモルをチーフ監督として招聘。アゼベドとは2010〜2014年までレディオシャックなどで共に働いていた仲だ。さらにドイツ人監督のトルステン・シュミットが退団し、同じくドイツ人のエリック・ツァベルをトレーニングコーチ(パフォーマンスマネージャーという役職)としてチームに迎え入れた。エリックは息子のリックの指導だけでなく、キッテル復活のキーパーソンの一人かもしれない。

ロシア色を緩和しつつ、ドイツ色を主張しすぎず、強豪ベルギーの力をチームに導入しながら、立て直しを狙う意図が感じられる。

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現役時代のアゼベドは2004年にUSポスタルチームに加入し、2004・2005年とランス・アームストロングの総合連覇(※後に成績抹消)に貢献。現役引退後は2010年にレディオシャックで監督に就任。2014年にカチューシャに移籍して、2017年からカチューシャ・アルペシンのGMを務めている。つまり、USポスタルチームやレディオシャックを率いていたヨハン・ブリュイネールの薫陶を受けてきた人物といえる。ブリュイネールの評価は賛否が分かれるところであろうが、筆者はチーム監督としては優秀と考えている。

果たしてアゼベドは不振のチームを立て直すことができるのだろうか。その手腕に注目していきたい。

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