サンウェブアシスト通信Vol.1〜鬼軍曹と若武者たち〜

トム・デュムランがマリア・ローザを獲得して、初めて迎えるレースとなった第11ステージは、アップダウンの激しく、難易度☆4と設定されたテクニカルなコースだった。

大方の予想通り、序盤から激しいアタック合戦が繰り広げられ、今大会最多となる25名(2名+23名)の逃げが容認された。

容認された、というか逃げられてしまったと言った方が正確かもしれない。
なぜなら、これらアタック合戦への対応はリーダージャージを抱えるチーム・サンウェブが担っていたからだ。

大会前から、総合優勝を狙うには戦力不足感が否めないという評判であった。
(そもそも、デュムランがここまで総合優勝争いをするとも思われていなかったが。)

そのため、マリアローザ奪還を目論むナイロ・キンタナ擁するモビスターを筆頭に、サンウェブの弱点であるアシスト陣の薄さを狙った攻撃を仕掛けてきたのだ。

この動きに様々なチームが同調し、逃げ集団は一気にふくらんだ。
当のモビスターは逃げに、アンドレイ・アマドール、ホセホアキン・ロハス、ホセ・エラダの3名を送り込んだ。
総合で4分39秒遅れのアマドールが逃げに乗ったことで、サンウェブとしては自由に逃すわけには行かなくなった。

そうして、サンウェブアシスト陣総出で、逃げ集団を追いかけることになった。

結果は、アマドールに2分以上タイムを挽回されたとはいえ、デュムランはキンタナからタイムを失うことなく無事にフィニッシュ出来た。

貧弱と言われたサンウェブアシスト陣の奮闘が際立った形となったのだ。

どこまでサンウェブアシスト陣の力が保つのか。
はたまた、最終ステージまで無事にデュムランを護衛することが出来るのか。

いまやもう今大会の総合優勝の行方を最も左右する要素が、サンウェブのアシスト陣となっている。

そこで、『サンウェブアシスト通信』と題し、デュムランを護衛する部隊の奮闘ぶりをレポートしていきたい。

第1回は、サンウェブのアシスト陣の紹介と、第11ステージでの働きぶりをお伝えしたい。

サンウェブのアシスト陣メンバー紹介

No.182 フィル・バウハウス(22、ドイツ)

脚質はスプリンター。
第5ステージでは5位に入っている。

したがって、平坦アシストとしての役割が与えられることだろうが、22歳にして初のグランツール出場であり、これから迎える厳しい山岳ステージで仕事を果たせるかどうかは大いに不安。
タイムアウトも気になるところではある。

No.183 サイモン・ゲシュケ(31、ドイツ)

通称『ヒゲのゲシュケ』の通り、ジャイアント社の空洞実験を台無しにしかねないほどのボリューミーなお髭が最大の特徴。
そして、小柄な選手なのでプロトン内では非常に識別がしやすい。

脚質はオールラウンダーと言える選手で、どこでも仕事が出来る万能アシストだ。

No.184 チャド・ヘイガ(28、アメリカ)

特技はピアノという、『車輪の上のピアニスト』。

※参考動画

ピアノで培ったリズム感を活かしたペース走行が得意で、脚質はTTスペシャリストだ。

昨年の春のトレーニング中にジョン・デゲンコルプと共に交通事故に巻き込まれたが、体調はだいぶ戻ってきたとのことだ。

No.185 ウィルコ・ケルデルマン(26、オランダ)※第9ステージDNF

悲運のセカンドエース。
第9ステージで、モトバイクに激突し、指を骨折してリタイア。

あの時、ケルデルマンがいれば、ケルデルマンがいれば何とかなったのに…。という展開にならないことだけを、ただただ祈るばかり。

No.186 シンドレショースタッド・ルンケ(24、ノルウェー)

グランツール出場2回目の若手ノルウェー人選手。
昨年のブエルタでは総合135位で完走している。

今大会も山岳でしっかりとアシストとしての役割を果たせており、山岳アシストとしての期待がかかる。

No.187 ゲオルグ・プレイドラー(26、オーストリア)

2013年以来デュムランとはずっとチームメイトだ。
2人は同い年であり、気の合う友人でもあるだろう。

脚質はオールラウンダーで、身長190cmの巨躯を活かしたダイナミックな牽引に注目だ。

No.188 トム・シュタムスナイデル(32、オランダ)

クラシックレースやスプリントのリードアウトなどを得意とするスプリンター寄りの脚質を持っている。

主な役割は平坦でのアシストではあるが、グランツール出場12回の経験は、若手主体のサンウェブにとって大きな価値をもたらす。

No.189 ローレンス・テンダム(36、オランダ)

2014年ツール・ド・フランス総合9位に入ったこともある実力者。
脚質はクライマー寄りのオールラウンダー。

闘争心溢れるオランダの鬼軍曹は、デュムランの同郷の先輩でもあり、チームの精神的主柱だ。

ケルデルマン不在のいま、最も頼りになるアシストだろう。

第11ステージでの仕事ぶり

前述の通り、序盤のアタック合戦の対応に追われ、恐らくバウハウスとシュタムスナイデルは脱落した模様。
2人はグルペットでゴールしている。

モビスターが3名を送った逃げには、テンダムが自ら乗り込んでチェック。
自由に逃げられないよう睨みを利かせていた。

逃げが決まった後は、主にルンケ、ヘイガ、プレイドラー、ゲシュケの4名で集団牽引を行なっていた。
いつ全滅してもおかしくない状況の中で、登りで千切れては下りで追いつくような状態で必死の集団牽引を見せていた。

終盤の2級山岳で、ようやくトレック・セガフレードとFDJの協力を得られ、一安心と言った様子だった。

最後は逃げに乗っていたテンダムがデュムランのそばで無事にフィニッシュ。
他のアシストは度重なる総合上位陣による猛攻によって全滅していたが、こればかりは想定の範囲内だろう。

総評

デュムランのマリア・ローザを守るためにアシスト陣の士気は非常に高そうだ。

普通なら登りで千切れてお仕事終了なところでも、下りで追いついてまたアシストするというハードワークぶりを見せていた。

ゆえに、翌日以降への疲労蓄積が気になるところ。
幸い第12・13ステージと平坦ステージが続くので、アシスト陣は無理せず体調管理に努めたいところだ。

しかし、そのような隙を狙って平坦アシストが充実しているモビスターあたりが、またちょっかいをかけてくるかもしれない。

油断はならないが、平坦ステージであれば最悪真デュムラン自ら対応することが可能だ。本当の勝負どころである後半のステージに向けて、アシスト陣には無理しないでほしい。

以上で、第1回のレポートを終了する。

次回レポートは、サンウェブアシスト陣の活躍の如何では、いきなり廃刊もあり得る。
果たして、『サンウェブアシスト通信Vol.2』は発行されるのか?

そのあたりも含めて、サンウェブアシスト陣から目が離せない。

Rendez-Vous sur le vélo…

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